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おついたち(長月)


「初秋の風情・・・花鳥風月・・・うつろいの秋」


 初秋の訪れとともに、秋らしいかれんな草花が主役へと移るこの季節。
 日本人は古来「うつろう」ものを愛してきました。鴨長明の「方丈記」を例に挙げるまでもありませんが、花、鳥、風、月、といった自然は一時として同じ状態のことはなく、刻一刻と移ろってゆきます。そしてその一瞬一瞬に美を感じ、移ろうものを映し取り、心の中に定着させ、形に写してきました。「うつろい」は「移る」「映す」「写し」と展開してゆくのです。
 なぜ日本人は「うつろい」を愛してきたのでしょうか。それは日本人が多くのアジアの人々と同様、「坐る」民族だから。坐ると目の位置が安定し、人は観察を始めます。観察はただ見るだけでなく、聞く、嗅ぐといった五感を働かせてするものですから、やがて洞察となります。その結果、見えてくるものが「うつろい」。変わらないものなど何もなく、無常こそ真実であると知るようになるのです。
 初秋はそうした変化が著しい時季です。今まで漲っていた草本花木の生命力が立秋を境に衰え始め、いずれ朽ちてゆく冬に向かう。侘びという言葉が一番似合うのもこの季節です。
 花鳥風月の花鳥風は、「うつろい」を私たちに知らせてくれるツール。花が咲く。鳥が渡る。風の向きが変わる。これは季節の「知らせ」です。一方月ははるか昔から日本人にとって向こうの世界。花鳥風と比べて観念的で、自分自身の内なる自然と呼応させるかのように。自然を表現する言葉として花鳥風に月を加えたのは日本人の自然観が滲み出たものではないでしょうか。


 今月のおついたちは、初秋見渡す限りの秋の七草が咲き乱れた様を紅葉函の中に写してみました。お楽しみください。
 では、今月もどうかお元気で過ごされますように。
            元気で生きる  主人 田口 恵美子

萩(はぎ)

薄(すすき)

桔梗(ききょう)

撫子(なでしこ)

葛(くず)

藤袴(ふじばかま)

女郎花(おみなえし)
  秋来ぬと
    目にはさやかに見えねども
       風の音にぞおどろかれぬる
                    藤原 敏行(古今集)